トトロもいます。
防音について
はじめに
防音とは、遮音効果(外部に音が漏れないこと)と、音響効果(内部の音の響きが良いこと)が満たされたものを「防音」といい、遮音され吸音と反響のバランスがとれた部屋を「防音ルーム」といいます。
「音」は空気や建物などを振動させることで伝搬されます。遮音はこの振動をどこかでカットすることにあります。
一般の家庭での防音において全く外部に音を漏らさないようにすることは不可能ですし、そのような完璧なものを目指す必要も全く無い、ということをしっかり覚えておいて下さい。
(尚、以下の文中では概念的に「防音」と書きます)
不満
防音工事後よく耳にする不満に「音が跳ね返ってくる、音が回ってぐちゃぐちゃになる。気分が悪くなる。」などがあります。これらは、ほとんどの防音工事は音が漏れない(遮音効果)だけを考えての工事だからでしょう。ときとして、楽器本来の大音量に慣れていない場合も有るかと思います。(ピアノの音は80ホン以上)
・楽器の種類によって室内の音響効果を考慮する必要がある。
・遮音効果は既存の建築物によってその対応を考慮する必要がある。
ということです。
グラスウールと穴の開いた合板を一面に貼り付けて、隙間に発泡スチロールを詰め込んだだけの工事を「防音」と称することは間違いです。
部屋の扉や窓を閉める
少しでも空いているとそこから音が外に漏れます。
二重サッシや防音ガラスに交換することで更に遮音効果は上がります。
窓枠、ドア回り、壁のつなぎ目や床、エアコンのダクトや壁面コンセントなどに隙間がある場合はコーキング剤を流し込んでください。床や壁に歪みが生じて軋み音が出たり、窓や扉にガタつきがある場合は根本的な補修が必要です。
グラスウール
グラスウールは良く吸音しますが、あくまで吸音材で遮音材にはなりません。空気が通るすき間があったら遮音にはならないということです。
壁に貼り付けたグラスウールは時間が経つと次第に下の方へ沈んでしまいます。施工直後は効果があったのに今はひどく音が漏れるようだ、という場合はこのことが原因でしょう。部屋の全面にまんべんなく敷き詰められてこそ効果が望めますので、少しでも隙間が開いてしまうとそこから音が漏れて、効果は激減してしまいます。
段ボールや発泡スチロール材は吸音、遮音ともに適していません。遮音はある程度しますが、質量が少ないためむしろ共鳴材となってしまい逆効果となることが多いからです。
ピアノの低音
ピアノの低音の防音は、質量の大きい材質のものでないとほとんど効果がありません。
コンクリートや鉛などの材料は最適といえます。他にはゴム、板ガラス、綱板、石膏ボード、硬質合板やコンクリート合板なども適しています。壁や床などの継ぎ目はコーキング材を注入します。
インシュレータ(ピアノの足の受け皿)は、木やプラスチックの材質のものから特殊ゴム加工の防音・耐震用インシュレータに交換しましょう。
ピアノの高音
高音の方は、クッションやソファー、カーペットやカーテンなどでかなり調節できます。一般にグラスウール詰めにしてしまうと、最も重要な中高音域がスカスカになって迫力のない音になってしまいます。
適度な残響と吸音をするには、試したことはありませんが、大きい空き瓶、壺、クッションなどを置くと効果があるそうです。
防音パネルを取り付ける
アップライトピアノの背面に貼り付けるだけで20ホン前後落とすことができるようです。対価格比では効果絶大なようです。
消音キットを取り付ける
メーカーから発売されている「消音ピアノキット」を取り付けることで、無音で演奏できるようになります。取り付け可能なピアノの機種が限られていたり、ヘッドホンでの演奏は違和感を覚えるかもしれません。音は耳だけで聞くものでもありませんし。
しかも、アクションやタッチにより生じる振動音は抑えることができませんので、集合住宅では、思わぬ騒音源になってしまう可能性があります。
しかし生ピアノの鍵盤タッチで楽しめることは、エレキピアノなどには無いメリットとも言えます。最近の消音キットでは多音色や簡単なシーケンサを内蔵したものも有るようで、付加機能も見逃せないものとなっているようです。
生ピアノに改造を加えることに抵抗や、音質の変化に懸念を持たれるかもしれませんが、それらの心配はほとんど無いようです。現在考えられる消音手段としては最も現実的で最良の方法のひとつではないでしょうか。
防音ルームを設置する
楽器メーカなどで発売している防音室は、製品のグレードにより差はありますが、30ホン前後の防音効果があります。
ピアノの音は80ホン以上ありますので、部屋の外では50ホン以上聞こえることになります。このことから、既製のユニット式防音ルームは無意味(所詮ピアニスト用では無い)とする意見も多く耳にしますが、前述したように、完全に音を消す必要は無いのです。不安なほど音は外部に漏れますが、最も不快に感じる音の要素は効果的に消去されます。「防音」という言葉にこだわってしまうと、音が「聞こえる」ということと「音が不快に感じる」こととの違いが理解できなくなってしまいます。
音響の面では不満は残るものの実際に消費者レベルで金額的に可能且つ最高レベルの防音効果を望むのであれば適していると言えるでしょう。
防音は経済的、技術的にできることから始めてみましょう。思ったほどの効果が得られないことが多いかもしれませんが落胆する必要はありません。
工夫次第で思わぬ効果が得られる場合があるかもしれません。
ただ、いずれにしても「完全な防音」にはなりませんので周囲への気配りは必要でしょう。それほどまでに「防音は難しいもの」ということを理解してもらうに足る努力は惜しむべきではないでしょう。
現代の住宅事情に於いて防音に取り組むことは、市民としてのマナーであり音楽を愛する者としての最低限の義務であると言ってもよいと私は考えています。
音楽(ピアノ)も防音も、決して「お金持ち」だけのものではありません。
参考(imidas1991)
騒音レベル (ホン) |
|
|
0 | 聞こえる限界 |
|
10 | 呼吸の音 | |
20 | ささやき | |
30 | 深夜の郊外 | 静か |
40 | 聞き取れる(静かな住宅で聞くラジオ) | |
50 | 静かな事務所内部 | 日常生活で 望ましい範囲 |
60 | 時速40Kmで走っている自動車内部 | |
70 | タイプライターなどの軽作業 | うるさい |
80 | 地下鉄駅構内、楽器演奏(ピアノなど) | |
90 | 騒々しい工場内部 |
|
100 | 電車が通るときのガード下 | |
110 | 自動車のクラクションの直前 | 聴力機能に 障害をきたす |
120 | 飛行機のプロペラエンジンの直前 | |
130 | 肉体的に苦痛を感じる限界 | |
140 | ジェットエンジンの近く |
2000 Kj Laboratory
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にゃあ