4月23日 (日) 晴れ
今日は、レッスン内容ではなくて、防音についての私の経験や考えたことを書き留めておこうと思う。ピアノを弾くと音が出る。世の中にはピアノの音なんて常に騒音だと感じる方も、あるいは、普段はピアノの音は好きだけど、具合が悪いときや気分によって騒音に感じる方もいるだろうし、もちろんピアノを弾く側の弾き方、音の出し方によっても騒音になったりならなかったりするだろう。深夜以外なら長時間じゃなければ、弾いてもいいんじゃないの?という意見もありそうだが、生活が多様化している現代、夜中に働いて昼間に睡眠をとる人達だっている。私だって、正直に言うと、ピアノの音をうるさいなぁ〜って感じることがあるのだから・・・。
私が音楽教室に勤めていた若い頃、住まいは木造アパートの一階だった。当時はアップライトピアノだったが、防音は、置き場所を考えることとピアノに毛布を掛けたり弱音ペダルを使ったり程度しかできなくて、もちろん隣近所に気を遣って、いつも「すみませんねぇ〜。うるさいでしょう?」と気兼ねしながら、幸い気持ちのいい隣近所だったので苦情が来たことはなかったけれど、昼間の短時間しか落ち着いて音を出せなかったものである。しっかり音を出して弾かないと練習にはならないのだけど、隣近所が気になって、自宅ではふわーっとした曲しか弾けなかったような記憶もある。しっかり練習するのは、いつも音楽教室のピアノでだったし、自宅で生徒を教えるなんて考えられもしなかった。
グランドピアノが置けるような住まいを求めて、家探しをしていた時は、ピアノを持っているというだけで断られた所も多く、やっと大家さんの了解があって契約にこぎ着けた所でも、今度入居するのがピアノの先生らしい、という噂に神経質になった近所の方から、引っ越し前に苦情がきて契約破棄されて、泣く思いをしたこともある。何とか今の住まい(鉄筋コンクリート)を見つけて引っ越し、アップライトピアノの間は、床はもちろん、壁にも部屋中に絨毯やゴムを貼って、どの程度、周りに音が聞こえるか実験しながら、やっぱり日中の短時間しか練習できなかったし、自宅での生徒募集はせずに出張レッスンをこなしていた(その頃は音楽教室は辞めていた)。グランドピアノが置けるような、ということで、無理して広めの部屋を借りたので家賃が一気に跳ね上がり、生活できるのかなぁ?という不安を抱えながら、グランドピアノと防音室を夢見て節約!節約!の日々だった。
いよいよグランドピアノを買おう!と決心した10年前、にゃあさんが無理をしてでも一緒に防音室にしておいた方がいいと言ってくれた。賃貸のマンションなので部屋自体の防音は無理なので、カワイのユニット防音室を設置することになった。7畳強の部屋に6畳用のユニットを組むことになったが、最上階なので上に漏れる音は気にしなくてもいいが、下への振動が気になるので、床材はオプションで倍注文することにした。工事費込みで約100万円かかるという見積もり・・・う〜、もう一台グランドピアノが買える! おまけに防音室を組むと部屋が狭くなって、希望よりも小型のグランドしか入らないし、押入が潰れて収納が減るし、果たしてどの程度の防音効果があるか不安があるし、いつまでここに住み続けられるか保証もないし、借金が増えるのも怖ろしい・・・悩みはしたが、アップライトとグランドでは出る音量も違うし、私自身の練習を思い切りしたいのはもちろん、大きくなってきた出張レッスンの生徒達にも思いきりグランドを弾かせてあげたい、と清水の舞台から飛び降りる気持ちで施工して貰った。
無事に防音室が出来てグランドが入り、念のために床材の補充の他にグランドの足にはしっかりゴムを敷いて、わぁい!夢のレッスン室だ!と思ったが・・・実際に音を出してみると、レッスン室の隣の部屋ではしっかり聞こえている。あれ?防音ってこんなもの?と不安になったが、ピアノの音はするけれど騒音には感じないし、エレクトーンの音はベースがかすかに聞こえる程度、かえってよそのお宅のピアノの音の方が鮮明に聞こえてくる。うちの中でも、防音室から一番離れた部屋なら戸を閉めてしまうと、ほとんど聞こえなくなる。一歩玄関を出てしまえば、ガンガン弾いていても全く聞こえないし、お隣と下にお住まいの方によると、ベランダに出て耳を澄ませたら聞こえるかな?という具合だそうで、やっとある程度安心してピアノが弾け、自宅で生徒を引き受けられる環境を手に入れられた。とは言っても、完全な防音にはなっていないし、夜9時以降はピアノは弾いたことがないけれど・・・。
防音室では、音の反射がきついという話も聞くが、うちでは、生徒がピアノを弾いている時に電話がかかると弾くのを止めて貰わないと話が出来ないこと以外は、そう気になるほどではない。ヘッドフォンをつけてエレクトーンや電子ピアノを弾くよりも、ずっと楽だと思う。但し、部屋を密閉した感じになるので、長時間はしんどいかもしれないが、最高で自分の練習なら連続2時間、生徒のレッスンなら連続4時間程度は、この10年間やってきた。自分が少々疲れても周りにかける迷惑が小さくなるなら平気だな、と自信を持って言える。10年前のユニット防音室でも、この程度に快適な使用感なのだから、今出回っているものは、費用は高く付くかもしれないが、当然、もっと質のいいものだろう。
宮崎で子供の頃に習っていた先生のお宅が防音室だったかどうかは、よく覚えていないが、高校の頃の先生のお宅は防音室だったし、福岡で習った先生方のお宅は、どこも防音室になっていた。それで自然と自宅で教えられるようにするには、きちんと防音室を持たなくてはダメだ!という意識が出来ていたように思う。私の友人達も、一戸建てに住む友人もマンションに住む友人も、私と同じようにカワイ製のユニット防音室を使っている。昨夜、イグ茶で出会った横浜にお住まいのピアノの先生仲間のご友人もヤマハ製の防音室を使っていたり、お部屋自体が防音されていたりする方がほとんどだそうだ。
先日、ある先生のサイトの掲示板で、防音についての話が出ていて、メーカー製ユニット防音室の欠点ばかりを指摘され、お金持ちでないと防音室は出来ないから音楽が出来ないとか、その先生のお知り合いの先生には防音室にされてる方はいないとか、お金をかけて防音しても隣近所との折り合いが悪ければ無駄になるという話が出ていて、何か違うんじゃないかなぁ?と釈然としないものを感じた。無理をして防音室にしなくても、建物の構造や周りの環境によっては、隣近所とのお付き合いがうまくいっていれば、グランドの音を思い切りだしても大丈夫なような幸運な環境もあるかのもしれないが、そういうのは稀なことだと思う。趣味で弾くのならともかく、仕事として自分だけでなく生徒もとってレッスンするなら、隣近所に甘えるのではなく、前向きに防音を考えるのが筋だと思うのだけど・・・。うちの隣近所も、防音室を設置した当初、「そこまでしなくてもよかったのに、楽しみに聞いていたピアノの音が聞こえなくなって残念ですよ。」と言って下さったが、お引っ越しで入れ替わりの激しい近所なので、すでにお隣さんは違う方が住んでいる。どうせ入れ替わるお隣さんなら大金をかけて気を遣う必要はない、のではなく、どんな方がお隣さんになっても安心できる環境の方がいいはず・・・。赤字覚悟のうちの防音室は、そう考えたら安いものだったと思える。
たくさんの人が影響を受けるだろう(ピアノの先生の卵さん達も来られているだろう)アクセス数の多いサイトで、一方的にユニット防音室は意味がないと思われるのは心外だったし、貧乏でも防音室にしている先生もいることを知って欲しくて、イグぴょん伝言板にあるにゃあさんの書き込みに始まって、私もメーカー製ユニット防音室でも利点はある等の書き込みをした。そちらにご参加の方々の防音についての前向きなご意見も聞かれホッとした部分もあったし、そちらの先生のおっしゃりたいことを誤解していたらしい部分もあったようだが・・・どうも不愉快に思われたらしく、私の書き込みの後、先方から一方的に閉め出されてしまったので、その後、話がどう展開したかは不明である。